イーダのマンガ探訪

個人的にお勧めなマンガやアニメなどを上げていきます

「普通」からはみ出した人のラブストーリー「ヤンキー君と白杖ガール」

ってどんな作品?

ヤンキー君と白杖ガール 1 (MFC)

ヤンキー君と白杖ガール 1 (MFC)

 

 主人公黒川森生は地元ではかなり名の通ったヤンキー。

彼の顔を見れば誰もが道を開ける・・・

と、かなり盛った設定になっています。

インパクト与えるためにちょっとキャラの設定を盛り過ぎてるかもしれないです。

一方の赤座ユキコは白杖を持った小柄な女の子。

この二人がひょんな事から知り合い、お互いに戸惑いながらも

恋愛に、人生に成長していくという話です。

目が見えない事による一般人との違い

あえてここでは「普通の人」を「一般人」として書かせていただきます。

ユキコは全く目が見えないわけではなく、極端な弱視です。

元々モリオが惚れこんでしまったのも点字ブロックの上を塞いでいた

モリオに怒った事からでした。

ユキコに惚れこんでしまったモリオのアタックも相当なモノなんですが

目の不自由なユキコの距離感というのも思春期の男の子には

衝撃が大きいものがあります。

彼女はなまじ目が少し見えるので顔を近づけすぎるんですね。

このあたり、妙に女馴れしていないモリオのかわいらしさが見て取れます。

顔に傷のあるヤンキーが働くという事

ひょんな事からすっかりユキコに惚れこんでしまったモリオは

何とかして彼女の役に立ちたい、彼女に認めてもらいたいと奮闘します。

折も折、森生の抗争相手であるシシオは、なんと正社員として

働く事となりヤンキーを卒業するという。

高校中退で顔に傷があるモリオは過去に面接を幾度も受けていますが

その容姿から一発不合格になる事数知れず。

ユキコさんの為にプレゼントも贈れない自分に歯がゆさを感じます。

この「モリオの顔の傷」「ユキコの弱視」というのが

この作品では徐々に大きなテーマとなっていきます。

はみ出し者だからこそ見える「普通」という一部の人

モリオもユキコもハンディを背負いながら、周囲の仲間や上司、先生の

助けを借りながら何とか仕事もできるようになり、徐々に

社会の中の一員となっていきます。

そんな中でユキコがなかなか雇ってもらえない時のモリオの言葉が

私の心を強く打ちました。

耳が聴こえてひとりで歩けて五体満足でデカい病気も抱えてなくて

子供の事で急に休んだりもせず安い給料で残業も文句言わずやって

メンタルの弱えーのやコミュ障はやっかいだし

学歴や顔にデカいキズがあるヤツもか

もしも今「大丈夫」な奴でもそうじゃなくなって

決められたルールに合わせられなくなったら切られる

そんな社会にメーワクかけねえ「特別」なヤツだけが

今の社会では「フツウ」とされてるんでしょうね。

彼の言ってる事は極論ではありますが、社会人として

求められる事としては、おおよそ当たっているかと思います。

一度社会からはみ出した人やハンディのある人、病気などで

ドロップアウトした人などは最早「普通」ではないんです。

そこから「普通」扱いされるまでには物凄いエネルギーが必要になります。

普通じゃない人の生き方は?

この作品には他にも全盲の人や同性愛者など、世間からは

なかなか認められない人も出て来ます。

そんな人たちはどう生きて行けば良いのか。

そんな人たちとどう接して言ったらよいのか。

という事もきちんと描かれています。

ユキコがアルバイトしようとした時に勧めてくれたり

全盲の男の子に「色の概念を知る」事を教えてくれた

盲学校の先生は凄いと思わされました。

一般人がそうではない人に、その人の立場になって考えるというのは

簡単な事ではありません。

今の世の中、なかなか人に頼ったり助けてもらったりというのは

難しいものですが、まずは自分が人を助けることが出来たら

それが巡り巡って人に助けられる事にもつながるのではないか?

と、一見キレイ事のような事も自分が実践できないかと

考えさせてくれるのがこの作品の素晴らしい所だとおもいます。

この作品そのものが「普通」に見られるようになった作品

というのも、この作品そのものは元々pixivやニコニコ静画で書かれていたものが

角川文庫の目に留まり書籍化されたものでもあります。

seiga.nicovideo.jp

www.pixiv.net

途中からの作風の変化から見て、作者も目が見えない人の事などを

かなり勉強しながら書いているのだろうとうかがい知る事ができます。

(実際にどうかは作者のコメントを見てないので分からないのですが)

こういった志のあるけどあまり人の目に触れない作品って

まだまだたくさんあると思いますので、ぜひこういった作品が

目に留まり、認められ、世間一般に知れ渡ってくれたらと思います。

それは、目の見えない人、耳の聞こえない人、色んな悩みを持っている人を

世間が知ってくれる一因となってくれるのではないかという

私の願いでもあります。