イーダのマンガ探訪

個人的にお勧めなマンガやアニメなどを上げていきます

大正のロマンス「大正乙女御伽噺」

大正時代を舞台にした作品

鬼滅の刃」の大ヒットで大正時代というのもクローズアップ

されるようになりましたね。

私の蔵書の中にも大正時代のものがいくつかありますが

その中でもお気に入りなのが「大正乙女御伽噺」というマンガです。

大正処女御伽話 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)
 

 ご覧のように非常にかわいらしい絵柄で、どんな大正ロマンが展開されるのか

見ているだけでも楽しくなってきます。

きっと女の子たちのキャッキャウフフするような展開なんだろーなーと

思いきや

リアル大正時代の暗い部分

この作品の作者は、かなり大正時代に造詣が深いか

かなりの勉強をされた方ではないかと思われます。

(それこそ、森薫ヴィクトリア朝時代に異様に詳しかったように)

主人公は玉彦の父は明治から大正時代にかけて、日本が戦争で勝つたびに

成長していった新鋭の事業化。いわゆる「成金」であったと想像されます。

玉彦も当時の社会風景から「お坊ちゃま」として暮らしていきますが

自動車事故により母と右腕の自由を失ってしまいます。

これを境に父親の態度が豹変してきます。

手の治療と称して千葉の田舎(場所は厳密には分からないです)の別荘に

押し込められ、世話係兼将来の嫁としてユヅをあてがわれる事になります。

連載開始当時、玉彦は数え年で17歳、ユヅに至っては14歳という事なので

今でいえば高校2年くらいの男の子と中学2年くらいの女の子。

と考えると凄い事ですね。

(当時は男子17歳、女子は15歳で結婚できたようです)

当時の考えとして、効き手が不自由な息子がいる。というのは

体裁の悪い事であり、家に置いておくのはまかりならん。

というわけですね。

また、玉彦は父の事業拡大の際に恨みも多く買っており

別荘の近くの村でも快く思われていませんし、ユヅも基本蔑まれた目線を

送られることになります。

貴重な友人「陵」との出会い

 

自殺願望(というより自死願望といった方が適切)のある玉彦と

無駄に明るいユヅの二人暮らしですが、彼らの状況を

大きく変える人物が二人登場します。

それが村の離れに住み、玉彦の家に盗みに入る娘、陵と

玉彦と仲の悪い同母妹の珠子です。

陵は盗みに入ったことがばれているにもかかわらず

なぜか玉彦に付きまといます。それは自分が父親かr

暴力を受けているところを見られたからとか、自分の弟たちが

玉彦に妙になついているというのもあったのでしょう。

後に陵の淡い恋にも発展していきます。

珠子は最初はツンケンしていますが、やはり実家や学校での

暮らしに馴染めず同母兄の玉彦を訪ねてきたのでした。

そこで「とあること」をきっかけにユヅにすっかり懐いてしまい

ツンデレ&チョロインキャラとなってしまいます。

後にこのふたりは玉彦とユヅの生涯に大きな影響を

与えてくれることになります。

大正時代といえば・・・?

みなさんは大正時代というと、どのような事を思い出すでしょう?

大正ロマン?はいからさん?大正デモクラシー

 

 

色々ありますが、大正12年9月1日といえば防災の日

関東大震災のあった日でもあります。

この作品にも関東大震災はふたりにとって大きな至難と転機をもたらします。

私も夏休み明けの初日はいつも防災訓練をさせられたものでした。

他の人に聞くと、静岡以外ではそんなに防災訓練しないと聞いたのですが

本当なんでしょうか?

話の重さと絵の大事さ

この後にも二人の恋路を阻む展開はあるのですが

なにせ大正時代の事です。時代がかった古典的で陰湿なものも出てくるのですが

このかわいらしい絵だから必要以上に重く感じられない。

というのもあるのではないかと思われます。

もちろん二人の動向や行方に関してのめり込めない。というわけではありません。

おもわず「絶望した!」と叫びそうになる事もありますが

この絵だからこそ、それを耐えてみていられる。という部分も多いのです。

そしてまた玉彦とユヅを含め、周囲の人たちの心の温かさというのが

本当に伝わってくるのです。

これは、このシンプルで愛らしいキャラデザだからこそ。

というものは絶対にあるといって過言ではありません。

大正時代に思いをはせる

最初の方にも書きましたが、この作品、非常に大正時代の

風俗や生活などについても造詣が深いところがうかがえます。

鬼滅の刃」などで大正時代に興味を持たれた方。

気軽に大正時代の雰囲気を味わいたいという事であれば

この作品を手に取ってみることをお勧めします。

また、続編として「昭和オトメ御伽噺」という作品もありますので

ぜひそちらもご一読ください。