イーダのマンガ探訪

個人的にお勧めなマンガやアニメなどを上げていきます

元祖悪魔漫画?「魔王ダンテ」

当時の小学生には衝撃の少年漫画

私がこの作品に出合ったのは確か小学三年か四年の頃だと思う。

デビルマンはアニメで知っていたけど、この作品は桁が違った。

何の桁が?

そう、バイオレンス度が全くの桁違いだったのだ。

 

 そもそもこんなのが少年誌であって良いのか?

今ならそう思うでしょう。

だが、当時の私はこの作品にすんなりのめり込んでしまった。

理由はいくつかあるが、当時の私は

アニメでカムイ外伝タイガーマスク

すでに見ていたからでしょう。

それでもこの「魔王ダンテ」の衝撃度は凄かった。

今回はネタバレも含めてこの作品を紹介していこうと思います。

 

あまりにも無慈悲な導入部。

主人公で山岳部所属の宇津木涼は連日悪夢にうなされていた。

ある時は自分が巨人になっていたり

またある時は原始人が悪魔に殺されていたり

はたまたある時は高い山で怪物に出合い恐怖したり・・・

そんな中、日本アルプスに登山に行った時に遭難してしまい

気づくと氷河の断面に氷漬けにされた怪物を発見してしまう。

宇津木涼は魔王ダンテに呼び寄せられてしまったのだ。

そこで涼は催眠術にかけられ、ダンテを封印している機械(!)

破壊してしまう。

今の作品なら悪魔というのは自分を解き放ってくれた相手には

それなりに敬意を払ってくれたり礼をしたりするものだが

そこはダンテ、昔ながらのマンガの悪魔である。

そのまま宇津木涼を踏みつぶし食ってしまうのだ。

うーん、まさに悪魔の所業。

 

悪魔ですがなにか?

時同じ頃、日本で悪魔教の信者による黒ミサが行われていた。

少女を拉致し、裸で台の上に寝かせ、

鶏を引き裂いた血で身体を洗い

魔王ダンテの復活の祈りを捧げていた。

 

ダンテは食った相手の知識や能力を我が物にするのだが

この時は食った相手が悪かったようだ。

宇津木涼は敬虔なキリスト教徒の家に育っていた。

そのせいだろうか。なんとダンテの身体を逆に乗っ取ってしまう。

そして本能のままに日本へ向かう。

 

魔王対・・・

日本に戻った宇津木涼。だがその姿は魔王ダンテそのものであり

声は悪魔のそれでしかなかった。

そのため人間の軍隊から砲弾を浴び

更にはナパーム弾まで発射されてしまう

(余談だが現在ナパーム弾は使用されない事になっている)

悪魔になった自分を殺すことも出来ない人間に

絶望した宇津木涼はナパーム弾の炎が荒れ狂う中

悪魔を裏切り神に寝返った

というゼノンと遭遇して

彼の配下の100の悪魔を撃破しゼノンを引き裂きます。

この戦いで宇津木涼は身も心も悪魔そのものになっていた…

しかし、悪魔を裏切ったというゼノンに最後にこう告げられます。

「ソドムとゴモラの悲劇を忘れるな」

「ダンテ、悪魔軍団を立ち上げてくれ」

 

魔王ダンテにおける神、悪魔の解釈

ここまで書いたものを見ていただくと

宇津木涼は完全に被害者であり、ダンテは悪魔そのものです。

この作品の面白いところは

この後メドッサという女性悪魔によって語られるのですが

ダンテ、そして炎の中で対峙したゼノンなどは

地球の先住民族で、と呼ばれるものは

宇宙から飛来した侵略者である。という事です。

純粋な精神思念体である神は

その依り代を得るために地球に侵略し

後の悪魔となる先住民族を抹殺した。

という事になっているのです。

ソドムとゴモラも悪魔たちの都市であり

精神体であるから分離した牛頭馬頭によって

滅ぼされたという事になっています。

そして悪魔たちは必死に神と戦ううちに

他の生物などと合体して新たな力を得る

という特殊能力を手に入れることになります。

地球を制圧した神は、何億という数に分離し

当時の類人猿の先祖の中に宿り

現代の人間へと進化した。

これが魔王ダンテの中の

「神」「人」「悪魔」

の構図となっているのです。

 

神と悪魔、その後

新たなる人間として地球に根付いた神は

次第に自分自身が神であったという事実を忘れていきます。

元々持っていた超絶的な力も薄れていき

他の動物と同じような「ただの生き物」になっていきます。

そう

神が超絶的な力を振るっていた時に

苦渋をなめ続けて来た悪魔たちが

ついに復活し、自分たちの星を

奪還する時が来たのです!

 

その事実を思い出したダンテ改め宇津木涼は

メドッサに悪魔軍団を立ち上げるべく

世界各地に潜んでいる悪魔たちを呼び寄せるよう

命令します。

 

雑誌廃刊と打ち切り

ここまで斬新な考察とバイオレンスを融合させた

魔王ダンテですが、掲載していた雑誌が廃刊する事となり

作品そのものも打ち切りという事になってしまいます。

今でしたら他の雑誌で続きが描かれるという事もあったかもしれませんが

魔王ダンテ」のDNAは後のデビルマンに受け継がれる事になります。

また、平成になってから「真・魔王ダンテ」として描かれたようですが

私はこの作品は残念ながら読んでいません。

アニメにもなったのですが、原作ほどのインパクトはありませんでした。

魔王ダンテはやはりオリジナルの作品が至高と言えるでしょう。

デビルマンバイオレンスジャックなどのひな型ともなり

デザイン的にはマジンガーZの元ともなったという

魔王ダンテ

ぜひ触れてみてください。